BIOCITY ビオシティNo.70 南方熊楠と熊野の自然

監修:田村義也、志村真幸、南方熊楠顕彰会
発刊:2017年4月3日
価格:2,500円(+消費税)
判型:B5判
頁数:128頁
ISBN978-4-907083-41-0 C0040

特集
生誕150 周年記念
南方熊楠と熊野の自然 伝説からエコロジストの実像へ

生誕150周年を迎えた南方熊楠のエコロジストとしての実像に迫る。熊楠が残した人文・自然科学の膨大な研究資料の多くは、熊楠が後半生を過ごした田辺市の南方熊楠顕彰館に、また隠花植物標本約18,000点は国立科学博物館に収蔵されている。本書はこうした資料をベースに、博物学、生態学、民俗、信仰など、多様な視点から読み解く、南方熊楠の入門書。また、熊野古道の世界遺産追加登録を記念して、熊楠が守ろうとした熊野の自然を紹介する。

目次

巻頭言「巻頭言 ナチュラリスト南方熊楠」岩槻邦男

基調論文「伝説からエコロジストとしての実像へ 官民一体となった顕彰事業」真砂充敏・田辺市長

「鎮守の森の生態学 発見された南方熊楠のエコロジー論」田村義也

「南方熊楠特別賞受賞記念寄稿 菌類彩色図譜は自然の「抜書」だった」萩原博光

「多様な熊野の隠花植物と国立科学博物館「南方熊楠コレクショ」」土永浩史

「南方熊楠とロンドンの二つの「森」」志村真幸

「標本鑑定にみる熊楠の交流関係 ウェッブから今日の生物学者まで」橋爪博幸

「生態学者・後藤伸のライフワーク」玉井済夫

「民俗空観としての風景をみていた人々 私撰・生態民俗学者列伝」菊地 暁

「熊楠「随聞録」と紀伊熊野の山々にすむ妖怪」伊藤慎吾

「説話学者としての南方熊楠」杉山和也

「南方熊楠と「現場からの声」地域からみた神社合祀反対運動」畔上直樹

「自由へのニューロマンス 仏教と恋と熊楠」小田龍哉

「和漢洋の森羅万象を捉える 熊楠と近世和漢本草書(博物書)」郷間秀夫

特別寄稿「鎌倉時代の熊野詣を今に伝える藤原定家と熊野懐紙」恵美千鶴子

 

著者紹介

岩槻 邦男(イワツキ クニオ)

岩槻邦男:兵庫県立人と自然の博物館名誉館長、東京 大学名誉教授。日本人の自然観にもとづく 地球の持続性の確立に向けて積極的に発言 している。1994 年日本学士院エジンバラ 公賞受賞。2007年文化功労者。2016年コ スモス国際賞受賞。南方熊楠賞の選考委員
 熊楠の調度品をそのま ま保存する南方熊楠邸 写真:川廷昌弘
 (第1, 3回)、選考委員長(第5, 6回)。

真砂 充敏(マナゴ ミツトシ)

真砂充敏:田辺市長・南方熊楠顕彰会会長。1957年和歌山県生まれ。旧中辺路町議会 議員、旧中辺路町長を経て、2005年5月の市町村合併により新田辺市が誕 生し、初代市長に就任。旧中辺路町長時代に「紀伊山地の霊場と参詣道」の 世界遺産登録に携わる。

田村 義也(タムラ ヨシヤ)

田村義也:南方熊楠顕彰会学術部長、成城大学非常勤講師。1966年岩手 県生まれ。専門は比較文学比較文化。南方熊楠邸資料調査と『南 方熊楠邸蔵書目録』『同 資料目録』の編輯に参加。共編著に『南 方熊楠英文論考[ネイチャー]誌篇』『同 [ノーツアンドク エリーズ]誌篇』『南方熊楠とアジア』『南方熊楠大事典』など。

萩原 博光(ハギワラ ヒロミツ)

萩原博光:国立科学博物館名誉研究員、日本変形菌研究会顧問、南 方熊楠顕彰会副会長。専門は変形菌(粘菌)の分類・生 態学。日本とヒマラヤの高山における細胞性粘菌の垂直 分布を研究した。1982年より南方熊楠の隠花植物標本 の整理を続けている。平成27年南方熊楠特別賞受賞。

土栄 浩史(ドエイ ヒロシ)

土永浩史:和歌山県生まれ。神戸大学大学院修了。和歌山県立神島高等学校 教諭。南方熊楠顕彰会常任理事、日本蘚苔類学会地方幹事、環境 省希少野生動植物種保存推進員。論文に「紀伊半島における蘚苔 類の絶滅危惧種群の現状」・「大台ヶ原山の蘚苔類」・「大塔山系の 蘚苔類」・「屋久島原生自然環境保全地域の蘚苔類」など。

志村 真幸(シムラ マサキ)

志村真幸:南方熊楠研究会運営委員、京都外国語大学非常勤 講師。京都大学大学院修了。専門は南方熊楠研究。 とくに西洋史の立場から、熊楠を近代世界のなか に位置づけることを目指している。著書に『日本 犬の誕生』『異端者たちのイギリス』など。

橋爪 博幸(ハシヅメ ヒロユキ)

橋爪博幸:桐生大学短期大学部講師。1970年群馬県生まれ。人間・環境学博士(京都
 大学)。専門は環境思想。論文に「森林生態系の保全を訴える南方熊楠の思想」 (『桐生大学紀要』2015年)など。NPO法人「浅間・吾妻エコツーリズム協会」、 同じく「足尾に緑を育てる会」に所属。自然体験活動指導者(NEALリーダー)。

玉井 済夫(タマイ スミオ)

玉井済夫:1938年、新宮市生れ。東京教育大学理学部大学院修士課程 修了。県立高校教員時代から後藤伸氏や仲間と県内の自然環 境の調査・研究及び保全活動を続け、特に南方熊楠が天然記 念物とした田辺湾・神島の森林調査を続けている。和歌山県 自然環境研究会などに所属。2013年度田辺市文化賞受賞。

菊地 暁(キクチ アキラ)

菊地 暁:京都大学人文科学研究所助教。1969年北海道生まれ。大阪大学 大学院修了。専門は民俗学。著書に『柳田国男と民俗学の近代: 奥能登のアエノコトの二十世紀』(吉川弘文館、2001年)など。

伊藤 慎吾(イトウ シンゴ)

伊藤慎吾:国際日本文化研究センター客員准教授。専門は日本文学。特に中世から 近世にかけての文学・学芸の歴史を研究している。また近代の国文学研 究と民俗学の関係の研究の一環として南方熊楠の学問に関心を持ってい る。著書に『中世物語資料と近世社会』『室町戦国期の公家社会と文事』 など。2016年、南方熊楠顕彰館「熊楠と熊野の妖怪」展の展示に携わる。

杉山 和也(スギヤマ カズヤ)

杉山和也:青山学院大学大学院博士後期課程、在学中。ワニ、サ メ、クジラ、ネコ、クモなどの動物が、各時代の文学 作品に於いて、どのような認識をもって捉えられてい るかという問題について、漢籍や仏典などを介しての 国際的な影響関係を見据えつつ研究している。

畔上 直樹(アゼガミ ナオキ)

畔上直樹:上越教育大学大学院准教授。専門は歴史学・日本近現代地域 社会史。著書に『「村の鎮守」と戦前日本』(2009年)、『明治 神宮以前・以後』(共編著、2015年)など。最近の楽しみは、 海沿いにヤブマオ属植物をみてあるくこと。

小田 龍哉(オダ リョウスケ)

小田龍哉:同志社大学大学院博士課程。専門は文化史、宗教学。 知識人や宗教者の主体形成について関心がある。論文 に「南方熊楠の「事」と「理」、そして〈逆流の方法〉」 (2015年)、「土宜法龍と「事」ども」(2016年)など。

郷間 秀夫(ゴウマ ヒデオ)

郷間秀夫:栃木県立那須拓陽高等学校教諭。1963年生。専門は植物病理学、 菌類学、生物学史研究。南方熊楠の行った本草学、菌類学研究 に興味をもっている。

恵美 千鶴子(エミ チヅコ)

恵美千鶴子:東京国立博物館研究員。千葉大学大学院で日本近代美術史を学ぶ。近年 は書の鑑賞史を専門に研究。東博では、さまざまな切り口で書の展示を 企画している。2017年 8 月1日から 9月18日まで、東博・本館 4 室にて 藤原定家筆の熊野懐紙を展示予定。