信仰の対象と芸術の源泉
世界遺産 富士山の魅力を生かす
著者:五十嵐敬喜、岩槻邦男、松浦晃一郎、西村幸夫監修
発刊:2018年7月2日
価格:1,800円(+消費税)
判型:A5
頁数:168頁(カラー24頁)
ISBN 978-4-907083-47-2 C0040
富士山は2013年に世界文化遺産に登録された。その構成資産は、山域の遺構・神社、富士五湖、三保松原など25にのぼり、多くは自然環境と一体となっている。現在、富士山頂には毎年30万人近くが登り、ふもとを周遊する来訪者を入れるとじつに2千万人が訪れており、自然の保存管理が最大の課題である。独立峰である富士山の美しい姿は世界的にも有名で、日本人の心象風景であり、日本の国そのものの代名詞ともいえる存在。本書は、登録5周年を記念して、信仰の対象、芸術の源泉として世界に価値を認めたれた富士山の魅力を再確認し、次世代に伝えていくための一冊。
目次
巻頭言 世界遺産 富士山の魅力を生かすために 西村幸夫
第1章 世界遺産富士山の概要(歴史・信仰・芸術)
信仰の対象としての富士山 秋道智彌
芸術の源泉としての富士山 遠山敦子
世界遺産「富士山──信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産 富士山世界文化遺産協議会
第2章 座談会
信仰の山としての富士山を見つめ直して 清雲俊元、松浦晃一郎、岩槻邦男、五十嵐敬喜、西村幸夫
第3章 富士山の自然と文化的景観
富士山の文化的景観とその背景としての自然 岩槻邦男
富士山の文化的景観とは何か 五十嵐敬喜
世界遺産 富士山の自然保護問題 吉田正人
第4章 富士山の魅力を生かす視点
富士山ヴィジョンへの取り組み 富士山世界文化遺産協議会
未来を担う子供たちへ 富士の国づくりキッズ・スタディ・プログラム 青柳正規
自然遺産から複合遺産へ マオリの聖地、「信仰の対象」としてのトンガリロ山 岡橋純子
富士山ヴィジョンを通していかに「顕著で普遍的な価値」を高めるか 西村幸夫
著者紹介
岩槻邦男 いわつき・くにお
1934 年兵庫県生まれ。兵庫県立人と自然の博物館名誉館長。日本植物学会会長、国際植物園連合会長、日本ユネスコ国内委員などを歴任。94 年日本学士院エジンバラ公賞受賞。2007年文化功労者。16 年コスモス国際賞受賞。著書に『生命系』(岩波書店)、『文明が育てた植物たち』(東京大学出版会)など。
松浦晃一郎 まつうら・こういちろう
1937年山口県出身。外務省入省後、経済協力局長、北米局長、外務審議官を経て94 年より駐仏大使。98 年世界遺産委員会議長、99 年にアジア初となる第8 代ユネスコ事務局長に就任。著書に『世界遺産:ユネスコ事務局長は訴える』(講談社)、『国際人のすすめ』(静山社)など。
五十嵐敬喜 いがらし・たかよし
1944 年山形県生まれ。法政大学名誉教授、日本景観学会前会長、弁護士、元内閣官房参与。「美しい都市」をキーワードに、住民本位の都市計画のありかたを提唱。神奈川県真鶴町の「美の条例」制定など、全国の自治体や住民運動を支援する。著書に『世界遺産ユネスコ精神 平泉・鎌倉・四国遍路』(編著、公人の友社、2017 年)など。
西村幸夫 にしむら・ゆきお
1952 年福岡市生まれ。神戸芸術工科大学教授。東京大学先端科学研究センター所長などを経て現職。日本イコモス国内委員会委員長。専門は都市計画、都市保全計画、都市景観計画。著書に『西村幸夫風景論ノート』(鹿島出版会)、『都市保全計画』(東京大学出版会)、『世界文化遺産の思想』(共著、東京大学出版会)など。
秋道智彌 あきみち・ともや
1946 年京都府生まれ。山梨県立富士山世界遺産センター所長、総合地球環境学研究所名誉教授。専門は生態人類学、海洋民族学。日本、東南アジア、オセアニアなどで漁撈民を中心とした生態人類学的調査・研究活動を行う。著書に『水と世界遺産』(小学館)、『越境するコモンズ』(臨川書店)、『海に生きる』(東京大学出版会)など。
遠山敦子 とおやま・あつこ
1938 年三重県生まれ。静岡県富士山世界遺産センター館長。文化庁長官、駐トルコ共和国大使、国立西洋美術館長などを歴任後、2001年に文部科学大臣に就任。2012 年より認定NPO 法人富士山世界遺産国民会議理事長を5 年にわたって務めた。現在、(公財)トヨタ財団理事長、(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会評議員も務める。
清雲俊元 きよくも・しゅんげん
1935 年山梨県生まれ。山梨県甲州市の放光寺長老。65 年に放光寺住職となり、03 年より現職。山梨県教育委員長、山梨県文化財保護審議会長を歴任。現在、富士山世界文化遺産学術委員会委員、山梨郷土研究会理事長などを務める。編著書に『山梨県史』、『塩山市史』など。
吉田正人 よしだ・まさひと
1956 年千葉県生まれ。筑波大学教授、日本自然保護協会専務理事。沖縄県における海草藻場の変動と普天間飛行場移設計画に伴う影響、小笠原諸島の世界自然遺産登録に伴う自然保護上の課題など、主に人間活動が自然生態系に与える影響とそれに対する保全対策などを研究。著書に『世界自然遺産と生物多様性保全』(地人書館)など。
青柳正規 あおやぎ・まさのり
1944 年生まれ。認定NPO 法人富士山世界遺産国民会議理事長、東京大学名誉教授、山梨県立美術館長。独立行政法人国立美術館理事長、国立西洋美術館長、文化庁長官などを歴任。2017 年瑞宝重光章受章。著書に『古代都市ローマ』(中央公論美術出版)、『ローマ帝国』(岩波ジュニア新書)、『文化立国論』(ちくま新書)など。
岡橋純子 おかはし・じゅんこ
聖心女子大学国際交流学科准教授。専門は文化遺産学、文化政策学、国際文化協力。ユネスコ文化局・世界遺産センターのプログラム専門官を経て現職。