ビオシティ 79号 自然と文化をつなぐデザイン 宇宙観、信仰、伝統知を生かした自然保護
発刊:2019年7月1日
価格:2,500円(+消費税)
判型:B5判
頁数:128頁
ISBN978-4-907083-54-0 C0040
特集
自然と文化をつなぐデザイン
宇宙観、信仰、伝統知を生かした自然保護
監修 古田尚也 国際自然保護連合(IUCN)、大正大学地域構想研究所
自然保護における世界の新潮流として、人間社会と自然がひとつの「社会-生態系システム」を構成するという視点が生まれています。その思想は、人と自然をつなぐインターフェイスとしての文化(宇宙観・世界観、信仰体系、習俗、伝統知など)を重視します。日本の自然観に通じるようなこの新しい思想を、ヒントとなる事例や理論から明らかにします。
目次
4 巻頭言「自然保護に関する思想の変遷と新しい潮流」古田尚也
14 特別寄稿「日本の山岳信仰の歴史と現代:世界遺産登録と山をめぐる想像力の転換」鈴木正崇
22 「深くつながれた絆:保護地域における自然の文化的・精神的重要性」B. ヴェルシュレン+S. ブラウン
30 「守られる自然と失われる文化:保護地域における文化・民俗知の保全」柴崎茂光
36 「里山と社会との新たな関係:森林と人をつなぎ直す」八巻一成
44 「世界遺産 屋久島の近現代:島民の目線で辿る山林保全の歴史」寺田喜朗
54 「大山隠岐国立公園と文化体験:自然・文化の一体的な魅力発信の場へ」中山直樹
62 「四国遍路における遍路道の復活」向井公紀
68 「災害と共生する智恵と文化:伝統的な災害文化を踏まえ新しい災害文化をつくる」 島谷幸宏
76 「伝統的河川技術とレジリエンス:自然とうまく付き合う日本のグリーンインフラ」寺村 淳
84 「アートを生かした自然保護プロジェクト:ロヒンギャ難民キャンプでのゾウと人との共生」古田尚也
ミニ連載
90 奈良時代の書① 聖武天皇「雑集」_恵美千鶴子
連載
94 動物たちの文化誌㉖ 広重の動物たち_早川 篤
102 コミュニティデザイン学科通信⑬ 介護分野における課外授業_醍醐孝典
110 欧州グリーンインパクト② ジル・クレマンの庭_遠藤浩子
118 社会を動かすアートの新潮流④ 台北ビエンナーレ_清水裕子
古田尚也:大正大学地域構想研究所教授。1967年神奈川県生まれ。三菱総合研究所を経て、2009年より国際自然保護連合(IUCN)の日本オフィスにおいて生物多様性に関する国内外の政策展開に従事する。2015年より現職。編・著書に『Asian Sacred Natural Sites』(Routledge, 2016年)など。
鈴木正崇:慶應義塾大学名誉教授。専門は民俗宗教、祭祀芸能、民族生成の比較研究、および民俗社会を中心とする日本文化論など。著書に、『神と仏の民俗』(2001年)、『女人禁制』(2002年)、『山岳信仰』(2015年)、『熊野と神楽』(2018年)など多数。
柴崎茂光:国立歴史民俗博物館研究部・准教授。1972年埼玉県生まれ。専門は、林政学、民俗学(生業)。20代は現代的な視点から山村振興を考えていたが、地域を知れば知るほど、経済発展の歴史経路依存性を強く認識するようになり、現在の研究スタイルとなった。
八巻一成:国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所室長。1966年茨城県生まれ。筑波大学社会工学類卒業。専門は森林の持続可能な利用と保全、および森林を活かした地域づくり。著書に『イギリス国立公園の現状と将来』(編著)、『「田舎暮らし」と豊かさ』(共著)など。
寺田喜朗:大正大学教授。1972年屋久島生まれ。東洋大学大学院社会学研究科修了。専門は宗教社会学。日本宗教学会理事、「宗教と社会」学会常任委員。著書に『旧植民地における日系新宗教の受容』(ハーベスト社、2009年)、『近現代日本の宗教変動』(共編著、ハーベスト社、2016年)など。
中山直樹:環境省大山隠岐国立公園管理事務所長。1978年千葉県生まれ。東京大学大学院、オーストラリア国立大学大学院修了。環境省入省後、知床世界遺産登録、自然公園制度見直し、国際環境条約などを担当し、2017年より現職。
向井公紀:阿南市市民部文化振興課・事務主任・文化財専門職員。1981年徳島県生まれ。専門は、考古学。阿南市内の遺跡調査を担当。阿波水軍総帥の館跡である「森甚五兵衛館跡」や阿波九城の一つ「牛岐(富岡)城跡」、全国唯一の辰砂採掘遺跡である「若杉山遺跡」の発掘調査を実施。また遍路道の調査も担当している
島谷幸宏:九州大学工学研究院環境社会部門教授。1955年山口県生まれ。専門は、河川工学、河川環境。日本湿地学会会長、応用生態工学会理事、土木学会広報センター副センター長、風景デザイン研究会会長など。著書に、『河川の自然環境の保全と復元』『河川風景デザイン』などがある。
寺村 淳:九州大学大学院工学研究院環境社会部門・学術研究員、福岡工業大学客員研究員。専門は、土木史・災害史・地域づくり。熊本地震では椿ヶ丘復興支援ハウス、2015年の九州北部豪雨では九州大学の復興支援団として被災地の支援にあたる。水の土木史研究会の事務局を務める。