BIOCITY ビオシティ 85号 福島の記憶・記録 複合災害と「文化」のレジリエンス
複合災害から10年を迎える福島で、その地が育んできた歴史や文化を復元する作業、震災時の記憶を記録するための様々な活動を取り上げる。地域の多様な「文化」を未来へと継承していくための、創造的な取り組みを通して、真の復興とは何かを考える。
目次
特集
福島の記憶・記録
複合災害と「文化」のレジリエンス
12 巻頭言 複合災害被災地の過去・現在・未来 西村慎太郎
14 複合災害地における歴史的実践 福島県浜通りの大字誌 西村慎太郎
22 いわき市での民俗芸能の継承 田仲桂
30 東日本大震災と変わりゆく生活文化 川内町での民俗調査から 金子祥之
38 福島の歴史・文化遺産の記録 福島大学学生による文化財レスキュー 阿部浩一
46 避難所で生まれた「災害史料」 双葉町の経験を伝え、共有する 川上真理
54 「記憶資料」の保全活動 全町避難から始まった富岡町の聞き取り事業 門馬 健
62 大熊町震災記録誌『福島第一原発、立地町から。』 誰のために、何のために残すのか 喜浦 遊
70 大熊町の帰還困難区域のフロッタージュ製作 先人たちが残した碑文から震災遺産まで 鎌田清衛
78 ミュージアムに何ができるのか? 福島県立博物館の実践から 佐藤李青
86 未来に届けたい福島県で紡がれた日々 映像制作を通して出会った福島の人々のこと 椎木透子
ミニ連載
98 ヴィンテージ・アナログの世界 レコード・レーベルの黄金期㉕ 高荷洋一
102 平家納経を考える③ 平清盛筆 願文 恵美千鶴子
連載
106 動物たちの文化誌㉚ 牛の歩みのごとく 早川篤
114 欧州グリーンインパクト⑥ フランスのスローフラワー運動 遠藤浩子
口絵の作品
122 時のイコン 東日本大震災の記憶 六田知弘
今号ではこの地域の「文化」を軸とした論稿を揃えてみた。どの論稿を読んでもこの地域の過去・現在・未来を熱く語っているものとなっている。読者各位にはここに刻まれた多様な「文化」を踏まえて、今一度、複合災害被災地域のことに思いを寄せてもらいたい。そして、本書には描き切れなかった当該地域の「文化」にも触れてみてもらいたい。(西村慎太郎・巻頭言より)
著者紹介
西村慎太郎:人間文化研究機構国文学研究資料館准教授、NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴん代表理事。1974東京都生まれ。学習院大学大学院満期資格取得退学。専門は歴史学。歴史資料の保全を地域住民たちと進め、地域の歴史像を構築する。著書に『宮中のシェフ、鶴をさばく』(吉川弘文館、2012年)、『生実藩』(現代書館、2017年)など。